うつ病の回復は「波」があるのが普通?焦りや不安との向き合い方
うつ病と診断されて、「これから回復していくのかな?」と期待と同時に、不安な気持ちを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
回復への道のりは、時に長く感じられたり、「本当に良くなるんだろうか」と心配になったりすることもあるかと思います。特に、「今日は調子が良いけれど、明日はまた落ち込むかもしれない」といった気分の波に戸惑うこともあるかもしれません。
この気分の波は、うつ病の回復過程ではよく見られるものです。そして、その波との向き合い方を知っておくことは、焦らず、自分を責めずに進んでいくために大切なことです。
回復の道のりは「波がある」のが自然なこと
うつ病の回復は、階段を一段ずつまっすぐに上がるようなものではなく、上り坂の途中に平坦な道があったり、少し後戻りするように感じたりと、良い日と悪い日を繰り返しながら進んでいくことが多いと言われています。
これは、決してあなたが頑張っていないからでも、病気が治っていないからでもありません。心身の状態は、日々の出来事や体のリズムなど、様々な要因によって常に変化しています。うつ病の場合、その変化が気分の落ち込みや意欲の低下といった形で現れやすいのです。
「今日は調子が良いな」と感じる日もあれば、「なぜか体がだるい」「何もする気が起きない」といった日があるのは、回復過程では自然なこととして受け止めてみましょう。波があることをあらかじめ知っておくだけでも、「また悪くなったのでは…」という過度な不安を少し和らげることができるかもしれません。
「良い日」に焦りや無理をしない
調子が良い日があると、「このまま一気に回復したい」「遅れを取り戻さなきゃ」と焦る気持ちが出てくることがあるかもしれません。あるいは、「今日は元気だから、あれもこれもできるはずだ」と、つい無理をしてしまうこともあるでしょう。
しかし、回復途中の心身は、まだ十分に力を取り戻せていない場合が多くあります。調子が良いと感じても、そこで無理をしすぎると、疲れがどっと出てしまったり、再び気分の波が大きく落ち込んだりすることにつながることがあります。
良い日だと感じたら、それは回復に向かっている証拠かもしれません。ですが、その日を「頑張る日」にするのではなく、「自分を労わる日」にすることをおすすめします。好きな音楽をゆっくり聴いたり、短い散歩を楽しんだり、美味しいものをゆっくり味わったり。回復のために「何かをする」ことではなく、「心地よく過ごす」ことを優先してみましょう。
「悪い日」の過ごし方と自分への優しさ
逆に、気分の落ち込みや体の重さを強く感じる「悪い日」もあります。そんな日は、「どうして何もできないんだろう」「自分はダメだ」と、自分を責めてしまいがちです。
もしそんな日がきても、どうかご自身を責めないであげてください。それは、病気の影響で心身がお休みを求めているサインかもしれません。無理に「〇〇しなければ」と思う必要はありません。
- 必要であれば、いつもより長く眠る
- 静かな場所で横になる
- 温かい飲み物をゆっくり飲む
- 好きな毛布にくるまって過ごす
- ほんの短い時間でも、ベランダに出て空気を吸う
こうした、「何もしない」ことや、「最低限自分を安心させる」ことに許可を出してあげましょう。もし可能であれば、「今は波が来ているんだな」と、少しだけ客観的にご自身の状態を観察してみるのも一つの方法です。嵐がいつか去るように、悪い波もいつか過ぎていく、そう考えてみることで、少し気持ちが楽になることがあるかもしれません。
回復の兆候は「小さな変化」から
回復が進んでいく過程で、劇的な変化をすぐに感じることは少ないかもしれません。回復の兆候は、案外「小さな変化」として現れることが多いのです。
例えば、
- 以前は全く興味が持てなかったことに、少しだけ関心を持てた
- 朝、布団から出るのが少し楽になった
- 人とのやり取りが、前ほど辛くなくなった
- 美味しいと感じる瞬間が増えた
- 以前より短い時間でも集中できるようになった
- お風呂に入るのが億劫ではなくなった
こうした、一つ一つの「以前はできなかったけれど、少しだけできるようになったこと」や「以前より楽になったこと」に目を向けてみましょう。大きな変化だけを求めていると、小さな回復の兆候を見逃してしまうことがあります。そして、小さな変化に気づき、それを肯定的に捉えることが、次の小さな一歩への力になります。
回復は、焦らず、ご自身のペースで進んでいくことが何よりも大切です。波があるのは自然なことだと知って、良い日も悪い日も、ご自身に優しく接してみてください。そして、もし「一人で波を乗り越えるのはつらいな」と感じたら、専門家や信頼できる人、あるいは同じような経験をした方たちの言葉に触れてみるのも良いかもしれません。あなたは一人ではありません。