言葉にならないしんどさを抱えるあなたへ。自分を知るための「こころの記録」のつけ方
漠然とした「しんどさ」や、言葉にならないつらさを感じている方へ。
「なんだか調子が悪い」「以前のように活動できない」「頭の中がごちゃごちゃして、考えがまとまらない」と感じていても、それをうまく言葉にできなかったり、誰かに話すことが難しかったりすることもあるかもしれません。
一人で悩みを抱え込み、「このつらさは一体何なのだろう」「自分は大丈夫なのだろうか」と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そんな「言葉にならないしんどさ」を抱えている方が、自分自身の心や体の状態を理解するための方法として、「こころの記録」をつけることについてお話ししたいと思います。
「こころの記録」をつけることのメリット
「こころの記録」をつけるというのは、特別なことではありません。その時に感じた気持ちや、体調の変化、起こった出来事などを、ほんの少し書き留めてみるということです。
これは、あなたの心と体を理解するための、大切な手がかりになる可能性があります。
記録をつけることで、次のようなメリットが考えられます。
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自分の気持ちを「見える化」できる 頭の中で漠然としていた気持ちや考えが、文字にすることで少し整理され、客観的に見られるようになります。
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心や体の変化に気づきやすくなる 「どんな時に特にしんどいのか」「どんな症状が出やすいのか」「少し楽になるのはどんな時か」など、自分でも気づいていなかったパターンや傾向が見えてくることがあります。
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自己理解が深まる 記録を振り返ることで、自分が何にストレスを感じやすく、どんなことに喜びを感じるのかなど、自分自身についてより深く理解するきっかけになります。
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誰かに相談したり、受診したりする際に役立つ 医療機関を受診する際や、カウンセリングを受ける際などに、「いつ頃から、どんな症状が出ているか」を具体的に伝えやすくなります。自分の状況を整理しておくことで、安心して話すことにもつながります。
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頭の中の「ごちゃごちゃ」が少し落ち着く 頭の中でぐるぐる考えてしまうことを外に出す(書き出す)ことで、少し心が落ち着いたり、頭の中が整理されたような感覚が得られたりすることがあります。
どんなことを、どうやって記録すればいい?
「記録と言っても、何をどう書けばいいのだろう」と難しく考える必要はありません。一番大切なのは、「あなたが続けやすい方法で、無理なく行うこと」です。
例えば、次のようなことを書いてみても良いかもしれません。
- 日付と時間:いつのことか分かるように
- その時の気分:「ゆううつ」「不安」「イライラ」「少し落ち着いている」など、正直な気持ちを簡単な言葉で
- 体調:「体がだるい」「眠れない」「食欲がない」「頭痛がする」など、体の変化
- その日(その時)あった出来事:何をしたか、誰と会ったかなど、簡単な事実
- その時に考えたこと:頭の中で思ったこと、考えがまとまらなくても断片的に
- その他:「〇〇をしたら少し気が紛れた」「△△はつらかった」など、気づいたこと
書くツールも、何でも構いません。
- 手帳やノート
- スマートフォンのメモアプリ
- パソコンのメモ帳やWord
- 日記アプリ
など、あなたが一番気軽に、すぐに書き始められるものを選んでみてください。
「毎日書かなければ」「きちんと書かなければ」と気負う必要はありません。調子が良い時に少しだけ書いてみる、つらい時に今の気持ちを箇条書きにしてみる、など、まずは「書いてみようかな」と思った時に、気が向いたことを書き留めることから始めてみましょう。完璧を目指さなくて大丈夫です。
記録をつける上での大切な視点
記録をつけることは、自分を知るための手助けになりますが、いくつかの大切な視点があります。
- 義務感を持たない:記録をつけることが「〜しなければならない」という義務感になり、負担に感じてしまうなら、一旦お休みしても構いません。あなたの心と体を休ませることが最も大切です。
- 自分を責める材料にしない:記録を見て、自分のつらさや不調を改めて突きつけられるようで、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。記録は自分を責めるためではなく、理解するためのものです。もし記録を見ることがつらいと感じたら、無理に見返さなくて大丈夫です。
- つらすぎるときは書かなくてもいい:気持ちが非常に不安定で、書くこと自体が負担になったり、より一層つらい気持ちになったりする場合は、無理に書く必要はありません。
まとめにかえて
「こころの記録」は、あなたの心と体が送るサインに、あなたが耳を傾けるための一つの方法です。言葉にならないしんどさを抱えている時、それはあなたがあなた自身を理解し、大切にするための最初の一歩になる可能性があります。
記録をつけること自体が、すぐに何かを解決してくれるわけではないかもしれません。でも、自分の内側で起こっていることに少し意識を向けることで、漠然とした不安が和らいだり、次にどうしたら良いかのヒントが見つかったりすることがあります。
もし、この「こころの記録」をつけることで、少しでも自分のことが分かったり、気持ちが整理されたりしたら、それは素晴らしい一歩です。そして、その記録を誰かに話してみようかな、という気持ちになったら、それもまた大切な一歩です。
一人で抱え込まず、あなたのペースで、あなた自身と向き合う時間を持ってみてください。もし、記録を通して見えてきたことや、心と体の変化について誰かに相談したいと感じたら、信頼できる家族や友人、あるいは専門機関に頼ることも考えてみてください。
あなたは一人ではありません。あなたの心と体が少しでも穏やかになることを願っています。