うつ病回復期、外に出るのがつらいあなたへ。少しずつ社会とつながる小さな一歩
うつ病を経験し、少しずつ心や体が回復に向かっているのを感じ始めた頃、次に感じる不安として「社会とのつながり」について悩む方がいらっしゃるかもしれません。
しばらく休んでいたり、人と会う機会が減っていたりすると、「また普通に生活できるのかな」「外に出るのが怖い」「人にどう思われるだろう」といった気持ちが湧いてくるのは自然なことです。
この時期は、焦る気持ちと「でもまだ無理かも」という気持ちの間で揺れ動きやすいものです。この記事では、そんな回復期に、焦らず自分のペースで社会とのつながりを少しずつ取り戻していくための考え方や、具体的な小さなステップについてお伝えします。
回復期に感じる「外に出るのがつらい」「人と会うのが怖い」という気持ち
うつ病の回復期は、エネルギーが少しずつ戻ってきたり、前向きな気持ちになれる瞬間が増えたりする一方で、まだ以前と同じように動けない自分に焦りを感じたり、将来への不安を感じたりしやすい時期でもあります。
特に、外出することや人と会うことに対して、「疲れてしまわないか」「うまく話せるか」「体調が悪くなったらどうしよう」といった不安がつきまとうことがあります。これは、病気によって心身のエネルギーが低下していた期間が長かったことや、人との関わりから離れていたことによる自然な反応です。決してあなたが弱いからではありません。
この時期に最も大切なのは、「焦らない」ことです。回復のペースは人それぞれであり、社会とのつながりを再構築する道のりもまた、人によって異なります。無理をして以前と同じように振る舞おうとすると、かえって心身の負担になり、つらい気持ちが増してしまうこともあります。
まずは「心地よい状態」を少しずつ増やしてみる
社会とのつながりを取り戻すことを考えるとき、つい「仕事や学校に戻らなきゃ」「友達と以前のように付き合わなきゃ」といった大きな目標を考えがちです。しかし、回復期においては、まず目標を小さく設定し、自分が「心地よい」と感じられる状態を少しずつ増やしていくことから始めるのがおすすめです。
これは、「社会復帰」という結果を目指すのではなく、「心と体が少しでも楽になる、楽しいと感じられる瞬間を増やす」というプロセスに焦点を当てるということです。
少しずつ外とつながるための小さなステップ
具体的に、どのようなことから始めてみれば良いのでしょうか。以下に、無理なく試せるかもしれない小さなステップをいくつかご紹介します。
1. まずは家の外に出てみる
- 目的: 外の空気に触れる、体を動かす習慣を取り戻す
- 例:
- 家の周りを少しだけ散歩してみる。
- 近くのコンビニやスーパーまで行ってみる。
- 郵便ポストまで手紙を出しに行ってみる。
- 日当たりの良い場所で数分間、ぼーっとしてみる。
- ポイント: 時間や距離は気にせず、疲れたらすぐに引き返しましょう。目的がなくても大丈夫です。
2. 短い時間、身近な人と会ってみる
- 目的: 人との交流に少しずつ慣れる、安心できる関係性の中で練習する
- 例:
- 家族や信頼できる友人と、短い時間だけお茶を飲む。
- 無理のない範囲で、電話やメッセージでやり取りをする。
- 体調が良いときに、一緒に散歩をする。
- ポイント: 事前に「体調によっては早く帰るかもしれない」と伝えておくなど、無理なくいられる工夫をしましょう。
3. オンラインで社会とつながる
- 目的: 自宅にいながら情報に触れる、同じ興味を持つ人と緩くつながる
- 例:
- 興味のあるテーマのオンラインコミュニティを覗いてみる。
- 好きなアーティストや趣味に関する情報をインターネットで調べる。
- 匿名で同じ悩みを持つ人が集まる掲示板やSNSを見てみる。(情報に振り回されないよう注意も必要です)
- ポイント: 情報収集や交流は短時間にとどめ、疲れたらすぐにやめることが大切です。
4. 興味のあることに少しだけ関わってみる
- 目的: 好きなことや興味のあることを通して、外の世界と緩くつながる
- 例:
- 好きな本や雑誌を求めて書店に行ってみる。
- 美術館や博物館で、短時間だけ静かに過ごしてみる。
- 以前好きだった活動に関する情報を集めてみる。
- ポイント: あくまで「少しだけ」「無理のない範囲で」。義務感を持たず、楽しむことを優先しましょう。
これらのステップは、あくまで一例です。大切なのは、他の誰かと同じようにすることではなく、今の自分にとって何ならできそうか、何なら少し心地よく感じられそうか、を考えてみることです。
うまくいかない日があっても大丈夫
回復期には、体調や気分に波があるのが自然なことです。ある日は少し外出できたのに、次の日は全く動けない、といったことも起こり得ます。計画通りに進まなかったり、外に出ようと思ったけどうまくいかなかったりしても、自分を責める必要は全くありません。
「今日は難しかったな」「また今度チャレンジしてみよう」と、結果ではなく、挑戦しようとした自分自身を労ってあげてください。無理だと感じたら、すぐに引き返す勇気を持つことも、回復のためには非常に大切な自己肯定の行動です。
専門家への相談も引き続き大切です
回復期においても、不安が強くてなかなか外出できない、人との交流が苦痛すぎる、といった悩みが続く場合は、主治医やカウンセラーに相談することも有効です。専門家は、あなたの状況に合わせて、より具体的なアドバイスやサポートを提供してくれます。一人で抱え込まず、頼れる存在に話を聞いてもらうことも、大切な一歩です。
自分を褒めながら、ゆっくりと
うつ病からの回復は、マラソンに例えられることがあります。一気にゴールを目指すのではなく、給水所や休憩を挟みながら、自分のペースで少しずつ進んでいくものです。
今日、この記事を読んでみたこと、今の自分の状況について考えてみたこと、それ自体が、社会とつながるための、そして自分自身の回復のための小さな一歩です。
「これくらいならできそうかな」と思えることを見つけたら、ぜひ小さなことから試してみてください。そして、たとえそれがうまくいかなくても、挑戦しようとした自分、頑張っている自分を、どうかたくさん褒めてあげてください。
あなたは一人ではありません。焦らず、ゆっくりと、あなたのペースで進んでいきましょう。