『しんどいな』と感じ始めたあなたへ。うつ病と付き合いながら、日常生活で「小さな一歩」を見つけるヒント
「なんだか、しんどいな」と感じる毎日
最近、「前は当たり前にできていたことが、なぜか億劫に感じる」「とにかく体がだるくて、何もやる気が出ない」「気分が沈んで、何をしても楽しくない」と感じることはありませんか。
もし、こうした「しんどさ」が続いていて、日常生活に影響が出ているとしたら、それは心や体が「少し休んでほしい」というサインを出しているのかもしれません。もしかしたら、うつ病という病気の初期のサインではないかと、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
まだ診断を受けていない方も、受けたばかりでどうすれば良いか分からない方も、今、この「しんどさ」の渦中にいることは、きっとつらいことと思います。この記事では、そんなあなたが自分を責めすぎず、日常生活の中で少しでも楽になるための「小さな一歩」を見つけるヒントをいくつかご紹介したいと思います。
日常生活の「しんどさ」はどこから?
うつ病のサインは、人によってさまざまですが、多くの場合、これまで普通にできていた日常生活のことが難しくなるといった形で現れることがあります。
例えば、
- 朝起きるのがつらい、ベッドから出られない
- 身支度をするのが面倒に感じる
- 食事の準備や片付けが億劫になる、食欲がない、逆に食べ過ぎてしまう
- 部屋が散らかったままで、片付ける気になれない
- 仕事や勉強に集中できない、ミスが増える
- 友人や家族と連絡を取るのがおっくうになる
- 趣味や好きなことにも興味が持てなくなる
- 体調が悪くないのに、体がだるい、頭が重い、胃の調子が悪いと感じる
こうした変化があると、「自分がだらけているだけなのでは」「もっと頑張らなくちゃ」と自分を責めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの「しんどさ」は、あなたの努力不足や怠けから来ているのではなく、心や脳のエネルギーが低下していることによって起きている可能性が考えられます。病気の影響であると知ることは、自分を責める気持ちを少し手放すことにつながるかもしれません。
完璧を目指さない。「小さな一歩」から始める
体調がすぐれない時、特に気分の落ち込みや疲労感が強い時は、これまで普通にできていたことが急に難しく感じられます。そんな時に、「前と同じようにやらなくちゃ」と思うと、余計に苦しくなってしまいます。
うつ病の回復には時間がかかりますし、焦りは禁物です。大切なのは、今の自分が「これならできそうかな」と思えること、ほんの些細なことでも良いので、できることから少しずつ始めてみることです。完璧を目指す必要は全くありません。目標は、ぐっと下げて、できることのハードルを極限まで下げてみましょう。
例えば、
- 朝、起き上がれない日: 布団の中で、ただ体を起こしてみる。座ってみるだけでも大丈夫です。
- 身支度が面倒な日: 顔を洗うだけ。歯を磨くだけ。服を着替えるだけでも素晴らしい一歩です。
- 食事の準備が億劫な日: コンビニのおにぎりや、栄養補助ゼリーひとつでも構いません。何か少しでも口にできるなら、それで十分です。
- 部屋の片付けができない日: 床に落ちているゴミを一つだけ拾ってみる。テーブルの上をティッシュで拭いてみるだけでも良いのです。
- お風呂に入るのがつらい日: 温かいタオルで体を拭いてみる。髪の毛だけ洗ってみる。それだけでもすっきりすることがあります。
- 人と会うのがしんどい日: 誰かに返信しなきゃ、と思っているメッセージに絵文字一つだけ送ってみる。電話ではなく、短いメールで済ませてみる。
「何もできなかった…」と落ち込む日もあるかもしれません。でも、もし一つでも、ほんの少しでもできたことがあれば、それを「できたこと」として認めてあげてください。そして、もし何もできなかったとしても、それは今のあなたの体が休息を必要としているサインです。「休むこと」も、回復にとっては大切な一歩なのです。
心と体を少しだけ休める工夫
何もできないと感じている時でも、日常生活の中で少しだけ心と体を休める工夫を取り入れることで、しんどさが和らぐことがあります。これも、「大きなこと」ではなく、「小さなこと」から試してみましょう。
- 短い休息時間: 意識的にタイマーをセットして、10分だけ目を閉じて横になる。椅子に座って、温かい飲み物をゆっくり飲む。
- 心地よさを感じる: 好きな音楽を小さな音で聴く。肌触りの良いブランケットにくるまる。窓を開けて外の空気を感じる。好きな香りのアロマを焚いてみる。
- デジタルから離れる: スマートフォンやパソコンから少し離れてみる時間を作る。SNS を見るのがつらい時は、通知をオフにしたり、アプリを開かないようにしたりするのも良いでしょう。
- 軽く体を動かす: 散歩は難しいなら、家の中で軽いストレッチをする。椅子に座って足首を回すだけでも、血行が良くなることがあります。無理のない範囲で。
これらの工夫も、毎日完璧にこなす必要はありません。できそうな時に、できそうなことだけ、試してみてください。
周りに頼ることも「小さな一歩」
一人でこの「しんどさ」を抱え込まずに、誰かに話してみることも、回復に向けた大切な「小さな一歩」です。
- 信頼できる人: 家族や友人など、話しやすいと感じる人に今の気持ちを正直に話してみる。すべてを話せなくても、「なんだか調子が悪いんだ」と伝えるだけでも、気持ちが楽になることがあります。
- 専門家: 会社の産業医や保健師さん、大学の学生相談室などに相談してみる。守秘義務があるので、安心して話すことができる場合が多いです。
- 医療機関: 心療内科や精神科を受診することも、体の不調で内科を受診するのと同じように、心や脳の調子を整えるための大切な一歩です。すぐに受診する勇気が出なくても、まずは相談先の情報を調べてみるだけでも良いかもしれません。
誰かに話すことは、勇気がいることかもしれません。でも、自分のしんどさを言葉にすることで、状況を整理できたり、思いがけない助けが得られたりすることがあります。「話す」という行為自体が、孤独感を和らげ、次の一歩につながることもあります。
焦らず、少しずつ。あなたのペースで
『しんどいな』と感じる毎日の中、この記事を読んでくださっているあなたは、きっと「どうにかしたい」という思いを抱えていることと思います。その気持ちだけでも、素晴らしいことです。
回復への道のりは、一本道ではなく、時に立ち止まったり、後戻りしたりすることもあるかもしれません。体調にも波があります。大切なのは、焦らず、完璧を目指さず、今のあなたのペースで進むことです。
今日、もしあなたが何か「小さな一歩」を踏み出せたら、それは大きな成果です。たとえそれが、布団から体を起こすことだけだったとしても。自分を責めずに、できたことに目を向けて、自分自身に優しくいてください。
あなたは一人ではありません。回復への道は必ずあります。焦らず、ゆっくりと、あなたの「小さな一歩」を見つけていきましょう。