『うつ病は心の弱さじゃない』と言われるのはなぜ? 原因の考え方と自分を責めないヒント
『うつ病かも』と感じ始めたあなたへ。「心の弱さではない」という大切な視点
最近、「なんだか気持ちが落ち込むな」「前は楽しかったことが、今は何も感じない」「体がだるくて動くのがつらい」といった変化を感じ、もしかしてうつ病かもしれない、と気になり始めた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなとき、同時に「自分が弱いからこうなってしまったのでは?」「気の持ちようだと言われたらどうしよう」と、自分自身を責めてしまったり、誰かに話すのをためらってしまったりすることもあるかもしれません。
しかし、うつ病は「心の弱さ」や「怠け」などではありません。 これはとても大切な視点です。病気として、誰にでも起こりうる可能性のある状態として捉えられています。
この記事では、なぜうつ病が心の弱さではないと言われるのか、そして、うつ病の原因として現在どのようなことが考えられているのかを、分かりやすくお伝えしたいと思います。「自分のせいだ」と一人で抱え込んでいる方に、少しでも気持ちが楽になるヒントになれば幸いです。
うつ病は「心の弱さ」ではない、病気です
「うつ病=心が弱い人がかかるもの」という誤解は、まだ世の中に少なくないかもしれません。しかし、これは間違いです。
風邪やインフルエンザが、本人の意志や「気の持ちよう」でかかる・かからないが決まるものではないように、うつ病もまた、本人の性格や努力、精神力だけでどうにかなるものではありません。脳の機能や、体、環境など、さまざまな要素が複雑に絡み合って起こる、治療によって回復が期待できる病気と考えられています。
一生懸命頑張ってきた人、責任感が強い人、周りに気を遣う優しい人が、かえって心身のバランスを崩しやすくなることもあります。「強い弱い」ではなく、誰にでも起こりうる可能性がある状態なのです。
うつ病の原因として考えられていること
では、うつ病は一体なぜ起こるのでしょうか。実は、うつ病の原因はこれ一つ、と断定できるものではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。ここでは、主な要因として考えられていることをいくつかご紹介します。
1. 脳の機能の変化
私たちの気分や意欲、睡眠などに関わる脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスが崩れることが、うつ病と関連しているという考え方があります。これらの物質がうまく機能しないと、気分が落ち込んだり、意欲がなくなったりといった症状が現れやすくなると言われています。
2. ストレス
進学や就職、異動、人間関係の変化、失恋、大切な人との別れ、親しい人の病気や死、大きな失敗、借金問題など、人生におけるさまざまなストレスが、うつ病の発症の引き金となることがあります。良い出来事(結婚、昇進など)であっても、環境が大きく変化することはストレスになる場合があります。
ただし、同じようなストレスを受けても、うつ病になる人とならない人がいます。ストレスへの対処方法や、周囲からのサポート、その人のもともとの体質なども関係していると考えられています。
3. 環境要因
幼少期の体験、家庭環境、職場や学校での人間関係、社会的な孤立なども、うつ病の発症リスクを高める要因となりうると考えられています。長期間にわたる心身への負担や、安心できる環境がないことも影響します。
4. 体質・遺伝的要因
うつ病になりやすい「体質」があるのではないか、という研究も進められています。家族にうつ病の人がいる場合、そうでない人に比べて発症しやすい傾向があるという報告もありますが、遺伝だけで発症するわけではありません。体質に環境要因やストレスが加わることで発症すると考えられています。
5. その他の病気や薬
甲状腺の病気や貧血、脳卒中など、体の病気が原因でうつ状態になることもあります。また、一部の薬の副作用としてうつ症状が出ることがあります。
このように、うつ病は単一の原因ではなく、脳機能の変化、ストレス、環境、体質など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられているのです。
大切なのは「自分を責めないこと」
うつ病の原因について知ることは、「自分のせいだ」と自分を責めるためではありません。原因が自分自身の心の弱さだけではないことを理解し、病気として捉え、回復のための適切な一歩を踏み出すためです。
もし、「もしかしてうつ病かも」と感じてつらい気持ちを抱えているなら、まずは自分自身を責めるのをやめて、ありのままの気持ちを受け止めてあげてください。そして、「これは病気かもしれないんだな」と、少しだけ客観的に見てみることも大切です。
今、あなたができること
うつ病の原因は複雑ですが、回復への道は確かに存在します。もし今、しんどさを感じているなら、一人で抱え込まずに、次のようなことを考えてみませんか。
- まずは休むこと: 心身のエネルギーが枯渇しているサインかもしれません。無理に頑張ろうとせず、まずは心と体を休ませてあげてください。
- 誰かに話してみること: 信頼できる家族や友人、職場の同僚など、話を聞いてくれそうな人に気持ちを少し話してみることも、負担を軽くすることにつながります。
- 専門家に相談すること: 心療内科や精神科といった医療機関、精神保健福祉センター、カウンセリング機関など、専門家はあなたの味方になってくれます。初めての受診は勇気がいりますが、専門家の視点から状況を理解し、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。
これらの情報はあくまで一般的なものであり、一人一人の状況は異なります。専門家はあなたの状態を丁寧に見て、あなたに合った回復への道を一緒に探してくれます。
孤独ではない、回復への道はあります
「みんなの回復ノート」には、うつ病を経験したたくさんの人たちの声が集まっています。あなたが感じているつらさや孤独感は、多くの人が経験してきたことです。「自分だけじゃないんだ」と感じられることは、大きな安心につながるかもしれません。
うつ病の回復には時間がかかることもあり、波があるのが自然なことです。すぐに劇的に良くなるわけではないかもしれません。しかし、適切なケアとサポートを受けることで、症状が改善し、自分らしい日常を取り戻していくことは十分に可能です。
今、このつらい時期を過ごしているあなたへ。これはあなたの心の弱さではありません。決して一人で抱え込まず、病気としての理解を深め、回復への一歩を踏み出す勇気を持つことが大切です。私たちは、あなたが回復に向かう道のりを応援しています。